屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.105 真相解明のこと H14.10.21)

北朝鮮拉致事件の北朝鮮調査報告には死亡したといわれる人たちの死亡時期やそのほかつじつまの合わないことがあり、確認できる証拠もないので、北朝鮮からの情報は信じがたい。韓国に亡命し北朝鮮の工作員などが会ったりしたという情報を認めると、彼らの北朝鮮の陰謀についての証言を認めることになるので、会ったりした時期以前に死亡したことにしているが、実際はまだ生存している、と拉致被害者家族や多くの人がそう思っている。

また10月15日に5人の被害者が一時帰国したが、会見その他での話を聞く限りではその発言にはたががはめられていると見る向きが多い。話も北朝鮮の調査報告を補強する内容に終始しているようである。横田めぐみさんについては北朝鮮調査報告を補強するかのごとく周辺情報が出てくるがその他の死亡といわれている人たちの話は皆無だったと言われている。

北朝鮮は本当のことを言わない国である。北朝鮮が目論むごまかしのストーリーにそって、調査結果を捏造しているので、北朝鮮が渡してくる調査結果だけを当てにして拉致事件の真相解明をしていくことは相当困難である。特に国交正常化交渉以前にはもう無理だという見方は強い。政府は国交正常化交渉のなかで真相解明を進めると言っている。

さて真相解明ということである。組織の内部に入り込めず組織の発表しか情報源がないという状態が今の状態である。そういう状況では被害を受けたり疑惑を持っているものがあの組織が怪しいと思っても、自分たちの調査ではこうである、それ以外の疑わしきことはない、と言われればもう追求のしようがない。それ以上の解明は難しい。

こういうことは、思えばよく見聞きしたことと似ている。企業が公表あるいは報告している情報は会社の都合の良いようにやっているだけで、実態は不具合がいっぱいあるのを隠蔽していたというようなことがある。問題になった三菱自動車のクレーム隠しはその好例である。また外務省の鈴木宗男問題発生時の対応を見ても鈴木宗男形勢不利と見てから自分たちに都合のよいよう意図的に鈴木宗男の異常介入の証拠書類を開示してきた例がある。形勢不利になる前は鈴木宗男怖いで真相究明には消極的だった記憶がある。

日本の企業や官庁でさえ、人がなかの情報に接することが出来ない状況では自分たちの都合のよいように情報をごまかしたり隠したりするのである。北朝鮮という国が情報をごまかしたり隠蔽したりするのとたいして変わらないのである。今回の北朝鮮との平壌声明署名にいたる経緯でも、外務省の田中均局長が総理大臣にすら情報を隠したりして自分や外務省の功を追求しようとしたのではないかとの批判が多い。要は日本であれ北朝鮮であれ、組織に対する疑惑やクレームへの対応は、一応調査をした形を整えその結果の発表や報告では隠蔽やごまかしをする、そういう体質はあまり変わらないのである。

では北朝鮮拉致事件や三菱自動車のクレーム隠しや鈴木宗男の外務省異常介入の実態が表に出てきたかといえば、内部告発の類によるものである。拉致事件は亡命工作員の証言、最近ではよど号の妻の証言。これらは北朝鮮内部でスパイ活動や拉致に関係していた人間の告発といってよい。三菱自動車は内部告発そのものである。外務省の例も部内者のリークや選択的な情報の開示は内部告発の類と考えてよい。いずれも真相究明には内部告発のような、その組織の内部に精通したものの情報がないとなかなか難しいということなのである。

今後北朝鮮が本当にバンザイするなら別だろうが、今の状況のままで北朝鮮の調査に依存して真相解明しようとしても進展は難しい。日本でさえ現実に企業や官庁に見られるように、内部告発のようなものがないと問題が明らかにならず組織の都合よい情報操作ではぐらかされるのだから、北朝鮮での拉致事件の調査もさらなる内部告発のようなものがないと、進展には限界がある。だから政府は今後国交正常化交渉に乗せて拉致問題の解明も進めると言うしかないのだと思われる。

敵対感情を持った国家間で、内部告発の類といえば、スパイによる情報収集である。日本は多分韓国やアメリカなどの諜報活動から情報を得るようなことはやってきたとは思うが、日本が独自で北朝鮮のスパイをして情報を得るようなことしていたかは、調査団の交渉経緯の報道を見るかぎり疑わしい。その形跡はないように見える。北朝鮮は工作員を送り込みあるいはシンパ組織を通じて日本の情報や人間まで得ていたが、日本はほとんどそれに対抗できる北朝鮮内の情報を得られずに過ごしてきたようである。だから真相解明の詰めに迫力がないのかもしれない。

補足: 首脳会談_水面下交渉の成果
2024.02.21
上記本文内で、「外務省の田中均局長が総理大臣にすら情報を隠したりして自分や外務省の功を追求しようとしたのではないかとの批判が多い。要は日本であれ北朝鮮であれ、組織に対する疑惑やクレームへの対応は、一応調査をした形を整えその結果の発表や報告では隠蔽やごまかしをする、そういう体質はあまり変わらないのである。」ということを書いたのだが、昨日(2024.02.20)のあるテレビ番組で田中均氏が当時の日朝交渉と小泉首相の訪朝について以下のように言っていたのを聞いて田中氏への見方が少し変わった。

田中氏はミスターXに訪朝前に拉致被害者の名簿を出せと要求したが、それを出せば自分は殺されるから出せないと言われた。独裁国家ではトップが認めなければ下は何も言えないということである。そこで田中氏の考えである。官僚は首相に事実を伝えあとは首相の政治判断に委ねるのが本来の姿で官僚のこうした方がよいというような意見を言うべきではないということである。だから小泉首相には被害者が何人いるか、生存者は何人いるか分からない、訪朝し成果を得られるかどうかは分からないと伝えたそうである。それで(成果なく国内で批判を浴びることになるかも知れないが)国民のため訪朝し首脳会談をしようと小泉首相が決断したということである。


 
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