屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.82  屋久島(42):観光の規模のこと (H13.12.17)

今年は米国同時多発テロの影響か国内旅行が盛り返しているようである。屋久島も道を走っているときの感じでは観光客が心なしか増えているように感じられる。

屋久島にどのくらいの観光客が来るかと思って、屋久町のホームページを見ると年度別観光客数というデータが載っている。

年度 飛行機
H09 121,460 35,000 156,460
H10 127,683 39,699 167,382
H11 115,081 38,422 153,503
H12 90,813 32,600 123,413

船と飛行機の観光客数が記載データ、計は私が計算した値である。昨年度までは平成10年度をピークとして観光客は減少しつつあるようである。

そしてその旅客が宿泊する施設はどうなっているのかと思って、屋久島観光協会のホームページを見ると施設と宿泊定員の一覧表が乗っている。

上屋久町 1,114人(380人)、屋久町 1,520人(413人)、トータル 2,634人(793人)とある。

上記の値は私が表から集計したものである。カッコ付きの値は私が大きなホテルかなと思う施設の宿泊定員だけを集計してみたものである。(規模の大きい施設は多分観光エージェントのパックツアーなどで平均より施設稼働率は良いと思われる。その分他の施設は割を食っていることがあるかもしれないと思いどのくらいかと集計してみたものである。)

これだけでは観光の規模を考察するには十分でない。宿泊施設の稼働率を知りたいと思ったら、温泉ホテル建設反対のホームページに

「どの民間の宿泊施設も稼働率35%から45%で推移し近年の長期不況は入込み客の減少や低価格に悩まされ、経営は極めて厳しい苦境を強いられてるのが実情であります。」

というような記事があった。宿泊施設の稼働率は35%から45%ということのようである。

平成12年度を例にして考察してみる。宿泊容量2,634人(年間961,410人)だから稼働率は35%から45%ということは年間延べ宿泊人数は336,494人から432,635人あったということになる。観光客123,413人であるから、平均2.8泊から3.5泊つまり3泊くらいしていることになる。私が大きなホテルに勤めていたときの経験では、ツアー客が結構多く一泊がほとんどだからこの値に驚く。私の感覚では来る日帰る日は移動時間で半日はとられて中一日を縄文杉登山など屋久島を楽しむのに当てれば2泊が平均的かなと思っていたのでこういうこととは思っていなかった。

また一軒の宿泊施設の採算を例えば民宿で考えてみる。稼働率は低いほうの値35%で定員10人として一日平均3.5人の客が利用することになる。月30日として延べ105泊、一泊8,000円として月の収入84万円、施設の償却費を考えない(脱サラで施設投資は民宿経営の楽しみのためというような人の)場合、原価30%くらいと考えれば59万円くらいの利益(サラリーマンで言えば給料相当)になる。近所にも夫婦二人で脱サラで民宿をしている人がいるが、経済的に成立しているものと考えられる。

次に交通容量からの観光の規模を見てみる。

飛行機                   68席で6便あるから 408人
トッピー(高速船)  244席で4便あるから 976人
フェリー2               定員 494人

以上から一日当たり輸送容量は2,360人、年間861,400人である。

平成12年度を例にとれば観光客年間123,413人だから輸送容量の14.4%に当たる。島民や商用客の利用がどのくらいか知らないが観光客の2倍の利用があっても50%いかない。季節的集中を考えなければ観光客輸送能力にはかなり余裕はありそうである。ただ輸送機関にとっては採算性がどの程度なのか知りたいと思う。顕彰碑のたった企業グループ創始者が定期船投入を理由のひとつとして顕彰されているが、企業は採算のめどがなくては事業はしないだろう。屋久島への飛行機や船が会社自体で成立しているか補助金などが出ているかはわからない。

交通容量と宿泊施設から見てみる。輸送容量一日2,360人、宿泊容量2,634人だから島民や商用客を乗せず観光客を満員で運んでくれば、連泊は難しい宿泊施設の容量であるということになる。屋久島では観光客は季節集中型の傾向があるから、シーズン中の上記観光客受け入れ容量で年間来客数の頭が抑えられていると思われる。しかし観光客の多さに悲鳴をあげるのも年に何日もないだろうから、その容量を増やしても年間では稼働率が上がらない。

今年のような外的要因で観光客がいつも増えるわけではない。観光客の基本的傾向は屋久町データに見るように減少傾向である。そういうこともあってか役場の杜撰な計画を非難理由にするだけではなく宿泊施設稼働率低下もひとつの理由として温泉ホテルの建て替え反対が旅館業組合の名で推進されている。しかし一方で麦生辺りに新しく高級ホテルが建設中らしい。既存施設を圧迫すると思われるが反対があったというようなことは聞いていない。民間だから文句のつけようがないのか、雇用提供と弱小の撤退とのトレードオフの結果ということかもしれない。


補足1: 史上最高の来島客のこと  (H15.07.01)

今年は史上最高の観光客数になるらしい。911テロ以来国内観光ドライブがかかっていたが、SARSの影響でさらにその傾向が強まったからということのようである。それにNHKテレビの「まんてん」効果もまだあるものと思われる。

補足2: 観光客50万人超える勢いのこと  (H20.09.11)

ある屋久島関係のブログを見ていたら、一昨年(H18)は33万人、昨年(H19)は40万人と増え続けている来島者が今年は50万人を超える勢いだと役場の人が言っていたそうである。それで宿泊施設の容量不足も心配されているようである。屋久島町の観光統計を見ると7〜8年前当たりからかなり来島者が増える傾向が続いている。

年度  飛行機 合計 本文中の
合計数値
H05    153,028 56,191 209,219  
H06 175,007 58,482 233,489  
H07 203,231 53,414 256,645  
H08 195,880 56,958 252,838  
H09 202,721 61,013 263,734 156,460
H10 211,288 68,447 279,735 167,382
H11 193,927 66,234 260,161 153,503
H12 191,570 71,507 263,077 123,413
H13 209,697 76,580 286,277  
H14 204,531 85,004 289,535  
H15 228,436 86,330 314,766  
H16 203,271 90,561 293,832  
H17 231,332 85,582 316,884  
H18 251,239 81,985 333,224  

屋久島町の観光統計を見てみると本文記載当時の屋久町発表の数値と異なっている。もしかしたら本文の数値は屋久町分だけで屋久島町のものには上屋久町分が上乗せされているのかもしれない。また最近の観光協会のページには宿泊施設一覧が載っていないので当時より増えていると思われる最近の宿泊施設の容量が分からない。


 
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