屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.36  屋久島(24):もの言うこと (H13.01.22)

屋久島へ来て、妻が面と向かってあるいは暗にきついことをはっきりいう女だといわれたことがある。鹿児島の風土では女は物事に口をはさまず男の思っているような女として振舞うことがよしとされているということをよく聞くからそういう観点からの言葉かと思う。確かにここで見るところ男のいないところで女は饒舌でも、男がいるとおとなしくしていることが多い。

私の見るところ妻の発言は理路整然としたものではない。感覚的におかしいと思ったことを口にだすといった方がよい。私も仲間内では通用する手前勝手な論理でやっていることに横から含むところなく口を出されて、ちょっと説得に困ってしまったということがある。妻になにか言われた人も困って妻の言い方に非をとなえたのかもしれない。

妻は長姉であとは弟三人だったからか男に臆することがあまりない。またちょっとしたことにも好奇心があり素直に感動したり、感じたことを言葉にだす。それが妻の魅力でもある。私は言うことが正しければそれで良いと思っている。

以下女性のもの言いを非難する人に、地域生活への女性の関与の例を挙げ反論しておく。

かつて住んでいた都会の住宅地は女性がしきる町である。多分都会の商店街を除く住宅地は殆どそうではないかと思う。私の住んでいた所では町内がいくつかの区域に分けられ町内会がある。屋久島で言えば区のような任意団体である。

町内会の役割は親睦を図ることのほかに、役所や警察や学校などからの連絡を各家庭に展開したり、各家庭の意見を集約して役所や警察や学校などへ上げることにある。美化活動なども勿論ある。

町内会区域は1000家庭以上が100班くらいに編成され人口は数千人、屋久町の半分くらいの人数がひとつの町内会である。そこを会長、副会長、各部会の部長と理事20人あまりで取り仕切るのである。会長・副会長と各部会の部長は総会で決める。他の理事は数班のブロックごと1名出す。ブロック内では各班輪番、あたった班内で転入順に輪番で理事をやる。何十年かにいっぺんしか回って来ない。妻はたまたま理事をやったことがある。他の役員も全て女性であった。

なぜ女性かというと男性はサラリーマンが多い。必然的に活動できるのは日中でも動ける家庭の主婦ということになる。猛烈サラリーマン時代はいうに及ばず昨今の経済状況の厳しいなか多分休日でも男性は家にいることが少ない。だから地域は女性がしきることになる。たまに退職した男性が役員につくことがあるがずっと地域と無縁で過ごしてきた男性が会社的建前ではじめはえらそうに振舞おうとしてもそのうち大人しくなる。

というわけで都会の住宅地の町内は女性に仕切られているのである。20人あまりの女性で数千人の地域の住み心地をまとめあげていく例が多いのである。順番が回ってきていやでも出ざるを得なかった、そういう妻のような女性でもきちんと言うべきことは言わなければならない。そうでなければよい地域はできない。

PTAもそうである。むかしよく父兄会の通知をもらったことがある。父兄会と言うのは間違いである。言うなら母会である。PTAの役員は教師側役員と会長を除けばあとは殆ど女性である。いやいや役員になっても会議では女性がはっきりものを言わなければものごとは進まない。

以上女性の地域生活への関与の例である。女性のもの言いで地域が回っている例である。屋久島の実体は良く分からない。

ところで妻の言い方に非をとなえた人がもし女性だったら、その人は男の思っているような女として振舞うことがよしという旧来の男の論理から抜けられない女性かもしれない。


 
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