屋久島生活の断片・偏見ご免のたわごと編
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No.16  屋久島(13):役場公金横領事件のこと (H12.09.03)

7月だったかTVニュースを見ていたら屋久町の役場で横領事件があったとのことである。金額はたいしたことがなさそうで懲戒処分だったが3人の内1人は退職したとかいうものであったように記憶している。

日経新聞しか取っていないので他の新聞に詳しく出たらしいが内容は知らない。噂によると以前役場の職員だった人がメディアにもらしたらしい。屋久町では前からこういう事件がかなりあったようである。いずれも軽い処分で内々に済ましてきたらしい。そういう体質に不満で役場を辞めた人が表沙汰にしたというものである。

私の話した限りの人の反響はこういう情報が表に出たことを歓迎している。場所を問わず役職の陰に隠れて悪さをするものは出る。誰でも多分発覚しないでうまいことが出来ればするものである。私だって会社勤めの時営業課長と語らって顧客へ製品売りこみに行った帰りどっかの酒場で会社の酒を知らん顔して飲んでしまったことがある。顧客を工場へ案内し接待しようとしたら突然の事情で帰ってしまった。その時接待用にもらってきた金を全部仲間で飲み食いしてしまったこともある。

またこれも営業課長と顧客訪問した帰りのことである。営業課長が花を買わなければと言う。聞けば馴染みのフィリッピーナが国に帰るから今夜8時までにどこそこの店に持ってきてくれと役員から頼まれたとのことである。さらに聞けば自分もそこに馴染みをつくっているらしい。会社の接待費で通っているのかと聞いたら 否定したが、役員と営業課長の組み合わせだから怪しい。私の部署に接待費はない。営業に頼んで出してもらう。くやしいが勝手は出来ない。追求してみるが彼との行動での弱みもあり深く追求できない。結局私はキャバレーまで送って行って車を会社に返す役回りになってしまった。役員に挨拶していったらといわれたが癪だからそのまま帰ったことがある。

以下、以上のような小悪をし、見聞きしてきた人間が書いている感想である。言い訳と矛盾ないまぜの感じがしないわけではない。

大体巨悪をなすのは権力を持ったもの、上に立つものである。官僚や政治家、大会社の経営者や社員である。新聞、TVを見ていればそうだと解る。彼らは権力を持っているからできるのである。その権力で組織や社会を食い物にする。役場の人間も格は小ながらその類に連なる可能性がある。それなりの権限を持っている。そこにはもっと大きな悪の芽が潜んでいるのかもしれない。告発することはそれなりに評価されるべきことである。

一方、今回事件の当該者を私は知っているわけではない。人となりも知らない。しかし屋久島は狭い。余り追い詰めると住み場がなくなるのではないかと気になる。巨悪をなす者には指揮権発動を筆頭にうやむやにするすべも楽して生きていくすべもある。反省の色もないなら別だが、件の人たちは着服した金は返したらしいから処分の軽重を蒸し返すことはないのではないかと自分の身になってみて思う。

問題はこの種の事件が繰り返し起こる体質や業務体制を問うことだろう。救いはある。この事件が発覚し処分されたのだからチェック機能が錆付いたわけではない。大体組織の雰囲気は上に立つもので決まるものである。下を切っただけではまた同じことが起こる。町の広報に管理監督の徹底および職員の自覚強化をはかる旨の町長のお詫びが載っていたが具体的方策は見えない。ただ口先だけで済ましたのなら、また起こる。

人は目先の利に弱いものである。誰でも権力を持てばやるだろう、自分がそうなれない立場の人間が正義を振りかざして批難する、ひかれものの小唄まがいとは山本夏彦の明察である。表沙汰にした人が誰か私は知らない。町組織の体質改善を意図したものと思うが別のやり方がなかったのかと思わぬでもない。狭い土地では表沙汰にしなくとも噂は広がりかなりつらいものである。

ところで出処進退の話である。恥を知ると言う話である。昔武士は恥を濯ぐために腹を切ったといわれる。実際そうだったかは知らない。しかし私の意識ではそうだ。またフランス映画を見てきた印象ではフランス人も同じようにして恥を濯ぐ。ヒチコックの映画だったか「トパーズ」でも国家への裏切りがばれた仏高官がピストル自殺をした。これは仏映画でないがそう描かれている。最近では伊丹十三がいつもの高邁な言論に反して不倫がばれたとき自殺した。私の知るところ恥を濯いだ最後の日本人である。

だが弱い人間にはそんなことはできない。男は出処進退を明らかにする(即ち辞める、去る)、そして沈黙を守る。仕事にでも女にでもそのくらいが弱い男の責任の取り方である。だから自分で辞めたなら私はもうそれで良いと思っている。

 

補足: 政治活動ビラのこと (H12.10.04)

今朝郵便受けを見たらビラが入っていた。前回の町長選で落選した候補のものである。ビラには第6号とあるが家には初めてなので来年の町長選のために活動範囲を広げてきていると見える。そのビラの中に職員不祥事に関する記事も出ている。

その内容ではなくビラの効用について感じるところがあった。役場職員の行為や行政の施策について問題を感じたら、あるいは情報を入手したら政治を目指す者、現職議員などはどんどん意見ビラを配ると良い。狭い地域なのでそんなに金がかかるわけではない。手っ取り早い情報開示になる。

それらのビラを見比べれば書いた人間の程度も解るから一石ニ鳥の効果もある。一時なら人の言説を真似しても書ける。だからみんな継続していろいろ本性を出して欲しいものである。私は酒は飲まない。酒で話はしないのでこういうビラがいろんな人から出るのを歓迎する。


 
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